受援力
「助けて」と言えない私たち日本人
-この社会問題に気付いた最初のきっかけは、ハーバードから帰国後、2010年に読んだこの本でした。
助けてと言えない―いま30代に何が [単行本]
NHKクローズアップ現代取材班 (著)
解説:派遣切り、ホームレス、孤独死―。社会から孤立する三十代が急増している。なぜ、彼らは「助けて」と声を上げないのか?就職氷河期世代の孤独な実態を描き、昨年度「クローズアップ現代」で最高視聴率を上げた番組を単行本化。
私は放送時、ハーバード留学中でしたので、このNHKの番組は見ていないのですが、内容は身につまされるものばかりで、社会から刷り込まれてきた「人に迷惑をかけてはいけない」「自己責任」「人に頼る=自分が弱い」という洗脳がいかに時代に合わないものになっているか、それを知らずに前時代的なマインドで物事に独りで対処していることで、日本の貴重な人材がいかに心身を壊していくか、すごく心に残りました。
その後、子育てや児童虐待の問題、そして被災地支援に関わる中で、ますます「助けてと言えない」世代や母親たちの苦悩に気づき、解決思考で何が出来るか、と真剣に考えたのが、拙著『「時間がない」から、なんでもできる!』にも書いた「受援力」(117ページ)です。被災地では、子どもを抱え、「助けて」と言えず孤立し流出していく世代がいた半面、子ども率の高い避難所では連帯意識・互助意識が高かったという経験もしました。
現在、私がいのちと健康の分野で取り組んでいる課題―孤独な子育て、子どもの虐待、一年で3万人の自殺&100万人以上のうつ患者、全国で61万人の看護師と1万人の女性医師が家庭を守るため専業主婦になっている現状―に対し、一人の母親として、「共助」「互助」という言い方では足りないと感じるようになりました。
むしろ、人に頼ることはいいことで、「受援力=一つの能力」なんだ、とポジティブなイメージを持ってもらう方が行動変容を起こせる。
「助けて、ということはむしろ人助け」
「助けられ上手は助け上手」
こう思えたら、辛い気持ちを抱えた人も、その周りの人も、どんなに楽になるか。
頼られる方も、人の役に立つことで己肯定感がアップし、生き甲斐を感じることが出来ます。
この「受援力」を身に着けることで防ぎえる人材の損失を、疫学統計スキルの中のDALY(= Disability adjusted Life Years 疾病により失われた寿命+疾病により影響を受けた年数×その障害ウェイト)を分析することできちんと証明する研究も、進めています。
また、「受援力」を発揮することで地域の絆が強まることを、ソーシャル・キャピタル指数を使って検証しようとしています。
一人の医師として、公衆衛生専門家として、母として、世界を見てきた経験から、今、このタイミングで「受援力」を知ってもらうことが、一人でも多くの人を救うのではないかと思っています。
日本人には長所も強みもたくさんあります。縮みゆく日本で一人一人の力を伸ばし、時間を効率的に使うためにはお互いの強みを出し合い、助け合うことが必要。そんな俯瞰的な視野を持って、日本や世界の将来に貢献したいと強く願っています。
皆さんのご意見を伺える機会を楽しみにしております。
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